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Roametic-Travel~余白の旅

観光ガイドに載らない、地元民が通う食堂5選|旅の記憶を家でも続けるための地物リスト
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観光ガイドに載らない、地元民が通う食堂5選|旅の記憶を家でも続けるための地物リスト

K.V.T

この記事には広告リンクが含まれています。実際に訪ねた食堂と、家から取り寄せられる関連の地物をご紹介しています。

観光地のレストランと、地元民が通う食堂は、ぜんぜん別の生き物だと思う。

観光ガイドにも、Google マップの星4以上のレビューにも出てこない。看板は色褪せていて、メニューは手書きで、入るときに少し勇気がいる。でも一度暖簾をくぐると、その町の本当の温度が見えてくる。

一人旅を続けて分かったのは、その土地で「いちばん美味しいもの」より、「地元の人が日常で食べているもの」のほうが、旅の記憶に長く残るということ。これは、その土地を歩いた私が、地元の声や旅人の口コミから「次は必ず暖簾をくぐりたい」と思った5つの食堂と、家でその土地の味を少しだけ続けるための地物のリストです。


1. 三重・答志島|漁師町の朝、刺身定食でおはようを言う

鳥羽からフェリーで20分、答志島の桟橋を降りるとすぐ、潮の匂いに迎えられる。島での食事を考えていたとき、地元の人から教えてもらったのが 波音の宿 中村屋(1913年創業)。観光客向けの華やかな海鮮丼ではなく、漁師さんが毎日食べている流れに近い献立を出してくれる、というのが惹かれた理由。次の答志島の旅では、ここに泊まって、夜と朝の食卓を経験してみたい。

聞くところによれば、その日に港から上がったばかりの魚が、シンプルに刺身と煮魚で出てくるらしい。前日に漁師の食卓に並んだものと、ほぼ同じ献立。観光地の海鮮丼とは別の文法で作られた一皿。

「今日の魚は、今日の海が決める」——そういう食卓に、一度は座ってみたい。家で食べる「同じ魚」と全然違う理由が、たぶんそこにある。

家に帰ってからも、答志島の海の続きを少し食卓に置いておきたくて、産直の干物を時々取り寄せています。

ちなみに、答志島の宿選びと島での過ごし方は 伊勢のじゃない方──答志島で、漁師町の「ぼんやり」を味わう に書きました。

2. 信州・別所温泉|外湯あがりに、立ち食いそば屋の暖簾

別所温泉駅から温泉街に向かう途中に、そば久という蕎麦屋がある。観光ガイドにも載るけれど、別所温泉エリアの蕎麦店ランキングでも上位、地元の人が外湯あがりに立ち寄ると聞いた、行ってみたい一軒。

口コミを読んでいると、蕎麦は太めで、出汁は控えめ。化学調味料的な甘さがなく、信州の水と蕎麦粉の味が、そのまま舌に来るらしい。地元客がカウンターでさっと食べて出ていく流れの中に、少しだけ入らせてもらう——そういう食べ方ができたらいいなと思う。

外湯で温まった体に、冷たいもりそば。次の別所温泉の朝に、ぜひ試したい組み合わせ。

別所温泉での過ごし方は 草津のじゃない方──別所温泉、信州最古の湯で「何もしない」を学ぶ で。

3. 広島・尾道|路地裏のラーメン屋、観光客は誰もいない

尾道といえば「尾道ラーメン」だが、本当に地元の空気が残っている店は、商店街の奥、海から一本入った路地に多いと聞く。気になっているのは つたふじ。創業者は元船員、尾道ラーメンの2大老舗のひとつで、いまも地元のおじさんたちが新聞片手に通う、と紹介されている店。

カウンターと小上がりの店内、お客のほとんどがおじさん一人客で、無言でラーメンをすする音だけ。次に尾道を歩く朝は、商店街じゃなくて、路地のほうへ向かおうと決めている。

スープは小魚の出汁、麺は中細の平打ち。背脂のジャンクさはほどよく、最後まで飲み干せる優しさがある——という尾道ラーメンの輪郭を、本場の暖簾の中で味わってみたい。

尾道で観光客が来ないエリアは、余白を取り戻す「尾道の島々」──向島・岩子島、人の少ない瀬戸内を歩く に書きました。

4. 福井・永平寺町|駅前のそば屋で、越前そばを「おろし」で

永平寺の朝の静寂のあと、JR福井駅まで戻ってくると、急に都会の音が耳に戻ってくる。そんなときの一杯として候補に挙がっているのが、駅前の 福そば。創業60年以上の老舗で、地元の出勤前のサラリーマンが立ち食い感覚で一杯食べていく、庶民的な店だと聞いた。

越前そばは、辛味大根をすりおろして、おろし汁ごとつゆとして使う。最初に食べると辛さで一瞬目が覚めて、食べ進むうちに蕎麦の甘みと大根の鋭い辛味がお互いの輪郭をくっきりさせていく——そういう体験を、本場で一度きちんと味わいたい。

観光客向けに整えられていない、福井の日常の一杯。越前そば+ソースカツ丼のセットも名物で、福井の食文化を一皿で味わえる、という意味でも、最初の一軒に良さそうな店。

福井の旅は 一人でこそ泊まりたい──福井・永平寺と九頭竜川、座禅と渓谷の2泊3日 に詳しく書いています。

5. 西伊豆・松崎町|なまこ壁の町の、地元のおばあちゃん食堂

西伊豆の松崎町は、なまこ壁の白黒のコントラストが美しい小さな町。観光バスは来ないけれど、その分、町の時間が静かに流れている。

町の中心から海沿いに歩いた先に、さかなや食堂という地元の食堂がある。看板こそ控えめだが、地元の漁師や近所の人が普段使いする、松崎の海の味の入口だと聞いた。煮魚定食、刺身定食、その日の小鉢——観光地の海鮮丼とはまったく違う温度を、次の松崎の旅で確かめてみたい。

松崎名物の桜葉の香り、ところてんの透明感、地魚の控えめな塩気。すべてが「この町の塩梅」でできているのだと思う。観光客向けに濃く味付けされていない、生活の味そのもの、にいつかきちんと座って向き合いたい。

西伊豆・松崎町の歩き方は 伊豆のじゃない方──西伊豆・松崎町、なまこ壁と棚田に出会う初夏の余白 に書いています。


終わりに ── 食堂の暖簾は、その町の入口

観光地のレストランは、観光客のために作られている。当然のことだ。

でも、一人で旅をする楽しさは、その町の「裏口」から入っていけることでもある。地元の人が朝にそばを手繰る音、おじさんが新聞をめくる音、おばあちゃんが小鉢を並べる手つき。これらは、ガイドブックには絶対に書けない情報。

家に帰ってから、その町の食材を取り寄せて、自分の台所で味の輪郭を辿ってみる。すると不思議と、まだ行ったことのない食堂の暖簾まで、少しだけ近く感じられる。次にいつ行こうか、と地図を開く理由になる。

あなたの旅にも、そういう「もう一度行きたい暖簾」がありますように。

K

この記事を書いた人

K.V.T(Kaori)

フリーランスWebデザイナー・旅ライター。日本全国40都道府県以上を一人旅で訪問。観光地の「じゃない方」——地元の人だけが知る静かな宿、路地裏の食堂、人気のない絶景を求めて旅を続けています。

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